日本の鉛筆の歴史
日本において鉛筆は、17世紀初頭に徳川家康が最初に使用したといわれる。当時の鉛筆のつくりは現代のものとほぼ同じだった。しかしそのころは定着せず、本格的に輸入が始まるのは19世紀後半、明治時代になってからだった。明治初期の日本において鉛筆の需要は少なく、東京や横浜の輸入品専門店で少量が売られるのみだった。日本での鉛筆製造は、1874年にウィーンで鉛筆製造技術を学んで戻った2名の政府伝修生井口直樹と藤山種重によって製造法がもたらされ、同年に小池卯八郎によって始められたとされる。小池の製造は1890年までは続いたがその後は記録がない。このほかにも若干の製造者がいた。現在まで続く製造業者は後述する真崎鉛筆製造所が最も古い。このほか、安政年間に仙台の士族樋渡源吾が少量の鉛筆を生産し売ったという記録もある。日本で最初の鉛筆の量産は、1887年に東京の新宿で、真崎鉛筆製造所(現在の三菱鉛筆)創業者・真崎仁六(まさき にろく)によって開始された。なお、三菱グループ|三菱財閥とこの会社は昔も今も全く関係がなく、「三菱マーク」は真崎鉛筆が最初に使用し、後から三菱財閥が許可をとり使用した。日本では長く文書を毛筆で書くしきたりがあり、鉛筆の普及は遅れた。1885年に英語教育に関する書籍が相次ぎ発刊され、同年に大量の鉛筆がアメリカから輸入された。この頃から学校では徐々に鉛筆が使われはじめるようになった。1901年に、逓信省(後の郵政省、現在の日本郵政|日本郵政グループ)が真崎鉛筆を採用した。郵便局内のみとはいえ、全国に鉛筆が供給されるようになった。この後1920年までに小学校で毛筆から鉛筆への切り替えが順次行われ、一般生活に深く浸透するようになったと考えられている。第一次世界大戦中の1915年ごろから輸出が本格化し、日本の主要輸出品の1つになった。ただし質が悪く、大戦終了後に輸出は激減する。1940年代は第二次世界大戦の影響で輸出がほぼ停止した。輸出は大戦後に復活し、現在に至る。近年は、学齢人口の減少、シャープペンシルの利用増、ワードプロセッサ|ワープロ・パーソナルコンピュータ|パソコンの普及などが原因で鉛筆の需要は大きく落ち込んでいる。雑貨統計によれば、日本の輸出量は1950年ごろが最大で188万ダース|グロス、1997年は45万グロス、日本製鉛筆の生産高は1966年ごろが最大で962万グロス、1997年は367万グロスであった。1998年には、労働省(現在の厚生労働省)が「事務用品の買い控えによる生産量の減少」を理由として鉛筆製造業を「雇用調整助成金の指定業種」に指定した。
徳川家康の鉛筆
徳川家康の鉛筆は、現存する日本で最も古い鉛筆で、削る種類のものである。鉛筆は、久能山東照宮で、硯箱に入った状態で発見された。硯箱は1664年に作られた宝物目録『具能山御道具之覚』に記載があるが、鉛筆の記載はない。硯箱に入っていたことから、家康のものとされる。鉛筆は長さ11.7cm, 芯の長さ6cm, 先端は削ってあり、太さ0.7cm, 重量6g。産地は日本ではなく、黒鉛、軸木ともに外国産だが、産地ははっきりしない。黒鉛はメキシコ産に質が似ている。軸木は、中米かフィリピン産。製品そのものは、ヨーロッパ製である可能性が高いと考えられている。
[朝比奈貞一「日本現存最古の鉛筆 - 徳川家康がもらった品」(神奈川県立衛生短期大学紀要2)][樋口清美 著書 p.38-47] 伊達政宗の鉛筆
鉛筆は、政宗の墓地である瑞鳳殿の発掘調査団長・伊東信雄により発見された。政宗の鉛筆は、先端に黒鉛の塊を詰めるもので、原理的にはゲスナーの使用したものに近い。政宗は1636年に死去し、副葬品の中から見つかったため、政宗の愛用品であったと考えられている。発掘は1974年に行われ、鉛筆は発掘品の中から1988年に発見された。鉛筆は全長7.4cm, 太さ0.4cm, 芯は先に詰めてあり、芯の長さ1.3cm, 最大直径0.43cm。キャップがついていた。キャップは木製で長さ3.0cm、直径0.6cm。鉛筆はさらに木筒に収められた状態で発見された
[「仙台市博物館調査研究報告第九号」]。軸の素材はササで、日本産かその近種。芯は何かで固めてあるが、当時ヨーロッパで使われたと考えられる硫黄やアンチモンは検出されなかった。黒鉛の産地は不明である。輸入品の鉛筆を愛用した政宗が、配下のものに命じて自分の使いやすいものを作らせた可能性がある。政宗の鉛筆は発掘後に極端に風化し、現在は原型をとどめていない。しかし、完全に風化する前に複製品が作られ、仙台市博物館、日本文具資料館(東京都台東区柳橋)、三菱鉛筆に存在している
[樋口清美 著書 p.55]。
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