成長と精神と落書き
で書かれると、もはや処置無しである。当人は人の顔を示したかったようだが、途中で目的を忘れたため、なんだか解らない物と成っている。
ある程度自発性が育ってきた幼児は、その程度にも個人差があるが、文房具|筆記具と紙さえ与えておけば落書き(もう少し丁寧に「お絵かき」と呼ぶ場合もある)に熱中する傾向がみられる。ことによると興にのって壁や床などにまで落書きしてしまうことも珍しいことではない。これら幼児の落書きは、幼児自身の成長|発育過程を把握する上で、興味深い資料となる。初期の段階では、専ら「何かを書く」という行為に関心を抱いた幼児は、紙の上に筆記具(クレヨンや鉛筆など)に「腕の左右の往復」という形で緩い弧を描く線をひたすら書く。仕舞いには紙が破れるまで線を幾重にも重ねて書く。線をひたすら描く時期が過ぎると、幼児は円を描き始める。最初の内こそグルグルと何重にも重なった歪な円を描くが、次第に描くという行為と表現する欲求を結び付け始め、これら円はやがて人の顔や物の輪郭として利用されるようになる。多くの場合に最初の物は、身近な人間である母親の顔などとする、円に目・鼻・口をあらわす線や丸を書き込んだ物を描くケースが多い。進歩すると母親と父親・祖父母といった書き分けを始めるようになる。この段階に至ると、急速に認識力が進歩し、両親の顔の違い・近所の人の顔の違いを明確に意識し始める様子が窺え、絵の方も丸や四角・三角を組み合わせた物へと進歩を始め、自動車や飛行機・家や木や花といった様々な物に関心を向けるようになり、同時期に起こる社会性の発達や行動半径の拡大により、多様な人・物・動物・植物を描くと共に、明確な嗜好によって絵にテーマが生まれるようになる様子が見られる。
練習方法としての落書き
線を引く・円を描く・絵にするという段階は、幼児の発達において見られる現象であるが、その一方で、扱いの難しい筆記用具に慣れるための練習にも用いられる。例えば漫画を書くためのペンは扱いの難しい筆記用具の一つとされているが、これの扱いを習得する上で、「フリーハンドで横線を引く」・「紙を動かさずに丸を描く」といった段階があり、これを習得する事で、自在に絵が描ける。これは線を書くことで適切な一定の筆圧を維持する練習となり、円を書くことで360度全方向へ筆先を滑らせる事が出来るようになる…という理由で、様々な筆記用具の練習にも応用する事が可能である。
精神活動と落書き
他方では自由に落書きさせる事で、児童の心理学|心理状態を調べる分野もあり、精神的な健康状態を落書きを描かせて測定する手法がある。この方法は失語症に陥っている大人にも適用されることもある。健康な精神状態にある児童は、様々な物を描く傾向が強いが、紛争や事件に巻き込まれたり児童虐待を受けるなど、トラウマや心的外傷後ストレス障害|PTSDによって精神活動にダメージを受けている児童では、上手に落書きをすることが出来ない。場合によっては極端にデフォルメされた人物像を描いたり、または意味のある絵が描けなくなってしまう現象も見られる。また精神的なダメージの回復に、落書きを根気良くさせる事でストレスの原因となっている記憶を吐き出させ、治療を行う方法も存在している。これらでは、ストレスの原因を絵を分析する事で周囲が把握し、これを取り除く方向で助けていくとされる。
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ある程度自発性が育ってきた幼児は、その程度にも個人差があるが、文房具|筆記具と紙さえ与えておけば落書き(もう少し丁寧に「お絵かき」と呼ぶ場合もある)に熱中する傾向がみられる。ことによると興にのって壁や床などにまで落書きしてしまうことも珍しいことではない。これら幼児の落書きは、幼児自身の成長|発育過程を把握する上で、興味深い資料となる。初期の段階では、専ら「何...